『優しい魂』シリーズ6ページ
『優しい魂』(不定期に掲載)
著者/Kenji Aso 2012年12月からのブログ投稿作品
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ユキの世界の中では、決まって呪いの効果が弱まる時間帯がある。
それは、ユキが身につけた強い呪いの品を、すべて外している朝までの時間帯である。
その時間帯になると、魔物達も建物などの影に姿をひそめるのだ。
優しいボクにとっては、この世界の平和を最も感じていられる一時である。
魔物達が影に潜むと、最近の優しいボクは、日課のようにして、ユキのいる中心の部屋まで足を運んでいる。
その時間になると、必ずユキが部屋のどこかにいるからである。
魔物達が息をひそめると、まるで一仕事終えたかのように、優しいボクは安心した表情をしながら、
「アイちゃん、ゆっくりしてて。ボクはちょっとこれから用事があるから。」
と言って、ユキの可愛らしい建物の方へ走っていくのである。
アイは、優しいボクの用事と言うものがなんなのかを知っている。優しいボクの後をつけて、一度見に行ったことがあるからだ。
柱の影から優しいボクがユキの裸を見ていたことや、ユキがいる部屋に近づいてユキの話を聞いている姿を、アイも隠れて見ていたのである。
その時のアイの切なさが、この上なかったことは確かだった。
それ以来、アイはその時間になると、いつもとぼけて優しいボクを見送っているのだ。
「あぁ~あ」
優しいボクを見送ると、アイはため息をつきながら、砦の外に出掛けていく。
「つまんないなぁ。」
優しいボクがこの世界の平和を感じている時には、アイはいつも、つまらなくてしょうがないのである。
「魔物達、早く目覚めてくれないかなぁ。」
アイは時々、そんなことを願っていたりする。
アイにしてみれば、優しいボクと一緒に、魔物達と戦っていた方が楽しいからである。
「魔物達~!」
アイの声は、扉が閉まった世界の中で、どこまでも反響し合っているようだった。
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そんなある日、アイがユキの世界の中をあてもなく歩いてると、あるおじいさんを見つけた。
おじいさんは、スコップを持って一生懸命に穴を掘っていた。
アイはそのおじいさんに尋ねてみた。
「あの、すいません。そこで、何してるんですか?」
おじいさんはアイを見て言った。
「おぉ、あんたもいたのかい。いったいこの世界はどうなってるんだ?」
扉は閉まってて出られないし、この世界の持ち主の所に行っても、話は通じないし、
ワシは、女房の所に早く戻りたいんだよ。
しょうがないから、穴掘って地下から抜けようと思ってな。」
「あんたは、あの娘さんと知り合いなのかい?」
それに対して、アイは言った。
「知り合いじゃないんですけど。
私も出られなくなってるんで…」
おじいさんは、それを聞いて、自分と同じ境遇だと思ったようだった。
「じゃ一緒に穴を掘ってここから出ようじゃないか!」
アイはこの世界から出たくはなかったが、このおじいさんは出してあげたかった。
そのため、アイはおじいさんの穴堀りに協力することにしたのだ。
「おじいさんはなんでこんな所にいるんですか。」
アイが、穴を掘り始めるおじいさんに尋ねると、おじいさんは語り始めた。
「男は駄目だなぁ。ワシはこの世界が美女達の憩う楽園の世界だと思ったんだよ。」
このおじいさんは、占い師のおばさんが策を催した時の美女軍団に、どこからかついてきてしまったのだ。
「それが気がついてみれば、もぬけの殻。おまけに扉まで閉まって、ワシはどうしたらいいのかと悩んだけどな、じたばたしたってしょうがない。
ここは一丁、穴を掘って抜け出すしかないと腹に決めたわけよ。
人間あきらめないことが肝心だからな。」
アイはこのおじいさんの話に、とりあえず納得した。
「それに、今となっちゃ女房のことも心配だからな。あいつ今頃どうしているかなぁ?」
このおじいさんは、まるで生き別れて何年も経過している奥さんのことを心配しているかように、寂しそうに言っていた。
それを聞いて、アイはなおさら、このおじいさんをこの世界から出してあげたくなっていたのだ。
「だけど、おじいさん、私、この世界でまだやることあるんで、手があいてる時しか手伝えませんよ?
私は、まだこの世界の中に居たいから。」
「そんなのいいって。
これはワシが勝手にやってるんだから。
あんたが出たい時に出れるように穴を掘っておくから、いつでも来な。」
おじいさんのその言葉にアイもどこか安心していたようだった。
そしていつしかアイの日常は、昼は砦で魔物達と戦い、夜はおじいさんの穴堀りの手伝いをするという風になっていったのだ。
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そんな日常の繰り返しの中で、アイがいつものように穴堀りの手伝いをしに行こうと、ふと扉の方を見ると、ユキの世界の扉は開いていたのだ。
「おじいさん、大変! 扉が開いてる!」
おじいさんの掘っていた穴はだいぶ先の方まで進んでいて、アイの声は聞こえていないようだった。
「おじぃ~さ~ん。
扉が開いてる~!」
それからしばらくして、おじいさんが穴の入口から顔を出すと、開いた扉を見て言った。
「ここまで掘ったのになぁ。ちょっと残念だな。」
それを聞いて、アイは少し驚いたように言った。
「だけど、これで奥さんに会いに行けるじゃないですか?」
「そうだなぁ。」
「いったん帰って、またここに穴掘りにくるかぁ。」
おじいさんは穴を掘っている間に、そのことに対して生き甲斐を感じてしまったのだ。
「あんたも帰ったらどうだい?」
おじいさんは、だいぶ親しくなっていたアイに、そう言った。
「私は…まだあの人がいるから…」
アイは砦の方を見て言った。
「あんたもまだ若いんだから。男なんていくらでもいるんだよ。ワシも、あんたが好きになった男のことで、とやかく言いたくないけどね、いったん自分の世界に戻って、ゆっくり考えてみたらどうだい。」
「そうしてみようかなぁ。」
扉が開いたと言うこともあり、アイもそんなおじいさんの話を受け入れられるようになっていたのだ。
穴の入口付近で、アイとおじいさんが話をしていると、そこへ優しいボクが突然やってきた。
「アイちゃん!!ついにあの娘の心が感じられるようになったよ!」
それを聞いてアイは答えた。
「私はユキって娘には興味がないから感じられないけど、良かったね。」
しかしユキはその時、病院にいた。事故に合い重体になっていたのだ。
それによって、ユキの心の扉を閉ざす要因となるものは、すべてなくなり、ただ愛する者へと心の扉は開かれた状態になっていたのである。
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優しいボクは、ユキの心を感じ取れるようになったものの、何かがいつもと違うことに気がついていた。
ユキの魂が、自分の部屋の中にずっととじ込もっていたからである。 笑いもせずに、ずっと泣いている。
そんなユキの魂を前に、優しいボクは、ただそばにいることしか出来なかったのだ。
そして自分の砦に戻っては、魔物が来ないかと回りを見渡しているのである。
そんな所にやってきたのは、占い師のおばさんだった。
「坊や、もう魔物はいないよ!
ここは私に任せて、あんたは、自分の家に戻りな。」
しかし優しいボクは、頑固にも動こうとしない。
「やっぱり無理かい。もう勝手にしな。ワタシもあんた達にはもう付き合ってられないよ!」
そして占い師のおばさんは、帰り際に言うのだ。
「この娘はねぇ、ちょっと前に事故にあってね、今意識不明の重体なんだよ、まぁあんたに言っても、分からないだろうけどさ。」
それを聞いた優しいボクは、再びユキの魂のそばに行っては、
「大丈夫?死んじゃだめだよ。」と言っていた。
アイの魂は、どうやらいったん自分の世界に戻ることにしたようだった。
穴を掘っていたおじいさんも、奥さんに会いに行ったようだった。
しかし優しいボクだけは、ユキの世界の中に築いた自分の城の中で、なぜか暮らしているのである。
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しばらくして、アイはフミつまり俺という男の様子を見に行くことにした。
自分の店の弁当を持って、恐る恐るアイはフミの家の呼び鈴を鳴らしたのだ。
しかし反応がない。
アイがあきらめて帰ろうとすると、フミの部屋から何かが割れる音が聞こえた。
アイは嫌な予感がしたため、大家に連絡し、カギを開けてもらうことにしたのだ。
ドアを開けてみると、フミは玄関手前で倒れていた。
フミの手だけが、何かを掴もうとしているかのように動いているだけだった。
救急車の登場である。
意識がもうろうとしているフミに寄り添い、アイも救急車に乗り込んで、病院に向かったのだ。
フミの病状は栄養失調と過度のストレスによる胃潰瘍、さらには精神障害などだった。
しかしそんなフミの病状よりも驚いたことは、その病室の中に、意識不明のユキが居たということである。
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フミがいる病室には6人の患者がいた。
この病院では、どの病室もいっぱいなため、病状に関係なく、色々な患者が一つの部屋に混ざりあって入っていることがあるのだ。
そして、この病室の中には、意識不明の患者が2人、認知症の患者が1人、足などを骨折した患者が1人、糖尿病の患者が1人、そして過労と診断されたフミの計6人の患者が入っている。
アイはそんな病室を見渡していて、気になっていたことがあった。
それはユキの隣で寝ているおじいさんの顔が、あの穴掘りのおじいさんとそっくりだったからだ。
そのおじいさんの横には、奥さんらしきおばあさんがいて、ずっとおじいさんを看病しているようだった。
アイがそのおばあさんにおじいさんの様態を尋ねてみると、このおじいさんは半年前から意識不明だという話だった。
原因はまだ解明されていないらしい。
アイはそのおじいさんの顔をじっと見て確信した。
「間違いない!やっぱりこの人は、穴掘りのおじいさんだ!」と。
そしてアイはまたこうも思った。
「また会えたらいいな。」と。
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疲れ果てたかのように眠っているフミの横で、アイは再び意識を魂の世界に持っていった。 そして、ユキの世界へ行った。
ユキの世界に行くと、優しいボクは相変わらず、城や砦の中をうろちょろしているようだった。
アイは、優しいボクがいる砦には行かずに、おじいさんが掘っていた穴の方へと向かうことにした。
あのおじいさんがいるかもしれないと、思ったからである。
行ってみると、スコップ片手に、穴の中に入っていこうとするおじいさんの姿を見つけた。
「おじいさ~ん!」
アイはおじいさんを呼び止めた。
「おぉ、あんたかい。」
おじいさんは、これから仕事でもしに行くような威勢のいい声で答えた。
「おじいさん、奥さんには会えました?」
「あぁ、会えたよ。
会えたけど、アイツには俺の言ってることが聞こえないからなぁ。
またいつものように、黙って本読んどったよ。
まぁいつものことだけどな。」
アイは、おじいさんが実際には、意識不明の状態だとは言えなかった。
それを伝えた所で、どうこうなる話ではないと思ったからだ。
アイはこのおじいさんの話を聞いていて、優しいボクの境遇に似ていると思った。
愛する者に自分の気持ちを伝えたくても、伝えることができない、それどころか、相手にその姿も見えていない。
それがどんなものなのか、アイは想像することしかできなかった。
「あの優しい魂君にも、病んだフミ君にも、私の姿は見えてるし、私の声も届いてる。だけど、
もしあの人の目に、この気持ちも私の姿も見えなかったとしたら…私はどうなるんだろう?
私は、ここに居ても、居ないことになるのかな?
あの優しい魂君や、このおじいさんのように。」
アイはおじいさんの前で、思いを巡らせていた。
「相手には見えなくても、会いたいと思うこのおじいさん。
相手に聞こえなくても、話しかけようとする優しい魂。
そう考えると、思いが通じていなくても、私は幸せな方だ。」
アイはそう思うのだった。
「今度、おじいさんの世界にも行ってみたいな。」
そうアイが言うと、
「来ても大したものはないけどなぁ。
来るんだったらお茶でも出してやるぜ。」
と、どこか嬉しそうにおじいさんは答えるのであった。
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それから、アイが優しいボクのいる小さな城の方へ登っていくと、
「今日は何見る?」
と、優しいボクがアイに突然聞いてきたのだ。
「私は意識してない時、いったいここで何してるんだろう??」
とアイは思った。
「何見るってなに?」
アイは優しいボクに尋ねてみた。
「物語だよ!昨日は黄色い屋根の劇場で一緒にサスペンスの物語見たでしょ!」
アイはそれを聞いて、自分は意外とこの世界で楽しんでるんだと思った。
「今日はフミ君に任せるよ。」
アイはとりあえず、そう答えることにした。
アイは、無意識の自分に責任が持てない以上、フミの優しい魂に身を委ねるしかなかったのだ。
「あなたの好きなようにして。」
そしてアイは優しいボクに聞こえないように、そう続けて言った。
「じゃそうするよ!」
優しいボクは嬉しそうに言った。
「あの人の様子はどうなの?」
アイが心配そうにして聞くと、優しいボクは答えた。
「だいぶ落ち着いたみたいだけど。相変わらず閉じこもってる。」
「いいの、遊んじゃって?」
「ボクは遊んでないよ。ボクはあの娘に何もしてあげられないから。
できるだけこの世界を楽しい世界にしてあげたいんだ。
だからボク達は楽しまないと。」
「そうなんだぁ。」
アイは優しいボクの言ってることが、よく分からなかったが、「まぁいいや」と思った。
しばらくすると、砦に二人の男が近づいて来た。
そしてアイに話かけてきたのだ。
「俺達、この世界の娘のこと助けたいと思って来たんだけど。
ちょっと話いいかな?」
アイは下に降りていき、二人の男と話をすることにした。
話によれば、この二人はユキと同じ病室にいる、
糖尿病患者のゴーと交通事故で足手をひどく骨折したニクだった。
どうやらこの二人は、ユキを見て一目惚れしたという類いの男達らしい。
「まだ歳も若くて、あんなに可愛いのに、意識不明なんて。」
と、強調文字に波線を引いたようなセリフで嘆いているのだ。
アイはその二人に言った。
「でも、どうやって助けるんですか?あの人には私達の声だって聞こえないですよ。」
「みんなで考えれば、なんか手立ては出てくるでしょう。」
ゴーは言った。
「そうだよ。みんなで力を合わせて、あの娘を目覚めさせようよ!」
ニクも言った。
そしてアイも言った
「じゃ、あの娘の回りでみんなで合唱しますか?
今はどうやったって無理じゃないですか?あの娘を目覚めさせるのは。」
助けに来た男達は、アイの現実的な話を聞いて、途方に暮れてしまうのだった。
「だけど、あの娘のことなら、私よりもあの人の方が詳しいですよ。」
と、アイは自分達の方を見てるフミの優しい魂を指差して言った。
優しいボクは、ユキの世界を見渡し、不審な人物がいないかと見張っていたのだ。
そして、すでにこの男達を不審人物としてチェックしていたのである。
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それから、優しいボクは下に降りて来て、三人の話に加わった。
「あの娘は渡さないよ。」
優しいボクは、この男達がユキを奪いに来たと思ったのだ。
アイはそれを聞いて言った。
「違うよ、フミ君。この人達は彼女の意識を目覚めさせたいって来たのよ。」
「そ、そうなんだよ!俺達、彼女の事が心配になっちゃってさ。」
ゴーは言った。
「俺のベッドの真向かいなんだよ、彼女。彼女見てたら、可哀想でさ。」
ニクは言った。
そして優しいボクは言った。
「目覚めさせるって?あの娘ならもう目覚めてるよ。」
それを聞いて、またアイは言った。
「あの娘の魂は目覚めてても、現実的にはずっと眠っているような状態なの。
とにかく!この人達は、あの娘を眠りから覚ましてあげたいんだって。」
優しいボクは、アイの言ってることがよく分からなかったが、この男達がユキを助けたいということは理解できたようだった。
「じゃあ、この世界にあの娘の好きなものをいっぱい作ってあげようよ。
そうすれば、あの娘も目覚めるんじゃないかなぁ。」
「彼女の好きなものって?」
ニクは尋ねてみた。
「遊園地とかケーキ屋さんとか、花屋さんとか。」
優しいボクは言った。
「そうするか?俺達、他にやることないもんな。」
ゴーは言った。
「そうだね、彼女が目覚めた時のためにも。」
ニクも言った。
「よし!じゃ俺、人集めてくるわ。」
ゴーはそう言うと、ニクも一緒になって、扉の方へ走っていった。
「あの娘には、何も見えないと思うんだけど…」
アイはそう思ったが、男達の熱い気持ちを否定するような言葉は言えなかったのだ。
※ニックネームの変換に関する注意書き・・・「優しい魂」の再投稿で思う事(ブログ下)
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ゴーやニク達の各世界への呼び掛けは早かった。
ユキの世界の入り口から、次から次へと人や動物などが入場してきたのだ。
そして次々に、空いている敷地に着いては、建物やら遊園地やら何らかの会場を作っていった。
作ると言っても、この世界は魂の世界である。
それぞれが空いてる敷地の前で念じ続けるのだ。
そして、みるみる内に、ユキの世界の中は華やかになり、 誰のどんな世界よりも楽しそうな世界になっていった。
それによって、人の出入りも多くなり、まるでテーマパークのような世界になっていったのだ。
その光景を見ていたアイは言った。
「人の世界の中をこんなに変えちゃっていいのかな?」
しかし、優しいボクはそんなこと気にしていないようだった。
ユキの世界の中を見回っては、「ここはこうした方がいいよ。」と、アドバイスしていたのだ。
ゴーとニクは、アイに駆け寄ってくると、誇らしげに笑っていた。
「この世界が彼女に届けばいいんだけどなぁ。」
ゴーは言った。
「これだけ賑やかになれば、彼女もうるさくなって目覚めるんじゃないかなぁ。」
ニクは冗談半分にそう言った。
「ホントにいいのかなぁ?人の世界をこんなにしちゃって。」
アイは納得がいかないようだった。
そこへ穴掘りのおじいさんがやって来たのだ。
ゴーもニクもおじいさんを見て「あぁー」と言ったが、 アイが「しぃー」と言ったことで、ゴーもニクも状況をとっさに理解したようだ。
「どうしたんだ、これは?ワシは夢でも見てるのか?美女達まで踊ってるじゃないか!」
と、おじいさんは言った。
アイは、おじいさんに返す言葉も見つからず、ただ笑っていた。
「何が起きたんだ??」
再びおじいさんが驚いたように聞き返すと、ゴーは言った。
「まぁまぁ、おじいさんもこっちに来て楽しんでくださいよ。」
そしておじいさんは
「そうかい。」と言うと、ゴーの後に着いて行くのだった。